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いい匂い

きょうは会社休みます

会社を休んだ。

 

休んだったら休んだ。

理由は『好きな人からのLINEの返信がないから』である。そういうことだから仕方ない。

 

会社を休むためには会社への言い訳と、家族への言い訳がそれぞれ必要である。会社には適当になんとでも言えるけれど、家族への言い訳が厄介で、あまり仮病を使いすぎると大きい病院での精密検査を要請されるので、今日はもう会社へ行くとうそぶいて自転車で家を出た。

 

まず向かったのは近所のファミリーレストランである。今日の出勤時間は11時から20時。ここでランチを食べて、14時頃に近くのカラオケに移動。フリータイムで20時まで一人カラオケという隙のない予定を立てた。

 

そしたら、雨降ってきた。

 

ファミレスで隣の席に座ったずっと独り言を言っているおじいさんが『すごい雨だ』と言っていて気づいた。ざんざかざんざか降っているらしい。たぶん、自転車を運転できる天候じゃない。

しかも座った席からは外の様子がわからなかった。ドリンクバーに立っても窓が近くにない。

もう20時までここに居座るかとも思ったが、ずっと独り言を言っているおじいさんが『席が狭い』『こんなところにいられない』『店員さん、どこかで俺と会ったことないか?』などとなかなかのボリュームで永遠に話していて数十分でノイローゼになりそうだったので諦めた。

一か八かでお会計をして外に出ると、案の定大雨で呆然とした。自転車に乗るとかいう頓着じゃない。歩きでも傘がないと出られないレベルだった。

さあどうするか、と思いながら、ファミレスに戻ることもできず、その隣にあるファストフード店へ駆け込む。雨が収まるのを待った。この時点でお腹はパンパンである。

 

しばらくすると雨が緩やかになって、道路を行き交う車たちもワイパーを動かさなくなった。

今だ!と思って、おかわり自由のカフェオレを1杯もおかわりすることなく外へ出る。

幸いにも自転車に乗れる程度だったので、ぐしょぐしょに濡れたサドルを手で拭って自転車にまたがった。今のうちに、カラオケ店へ到着すれば『勝ち』だ。

 

雨は強くなることなく、無事にカラオケ店へ着いた。

定休日だった。

 

もちろん、LINEもまだ、返らない。